A.
通常、膝や足関節など下肢の関節鏡の場合、背中に針を刺して行う脊髄麻酔や硬膜外麻酔で行います。
(この場合、術後に頭痛や嘔吐、ひどい場合は髄膜炎などの合併症を起こす可能性があるため、入院手術となります。)
また、肩や肘関節など上肢の関節鏡の場合は、全身麻酔で行うのが一般的です。
(この場合も、麻酔により身体に負担がかかるため、入院手術が望ましいです。)
A.
手術時間の長くないものは可能です。当院では肩関節と肘関節の手術には、腕神経叢(斜角筋間)ブロックと全身麻酔を併用して手術を施行しております。
当院の特徴として、腕神経叢ブロックを施行しているので、全身麻酔を浅く(麻酔投薬量を減らせる)できること、術後の疼痛が少ないことが日帰り手術を可能としております。
また原則として、尿道にカテーテルは留置しませんので、短パンなどをはいていただいたまま手術は試行します。
手術時間がおよそ2時間以内の、肩関節脱臼、拘縮、腱板、投球障害肩、インピンジメント症候群、肘関節鏡全般が対象となりますので、肩・肘関節手術の80%以上が日帰りで可能です。しかし、全身麻酔は術後3-4時間の経過観察を要しますので、日帰り手術は午前中に原則行っております。また翌日のガーゼ交換のために再度来院も必要です。ご高齢の方や、遠方の方、午後の手術の方は一泊入院をお勧めしております。
Q.
腕神経叢(斜角筋間)ブロックはどの様なものですか?
A.
頚椎から分岐した神経が集まって、上・中・下神経幹というまとまりを作る部分に(およそ頚椎の外側4-5cmで鎖骨の上)、局所麻酔薬を使用してブロック注射をする手技のことです。肩から指先までの神経が一時的にブロックされますので、欧米ではこれのみで手術をする施設もあるほどです。
当院では確実に、安全にブロックするために超音波(エコー)で神経の位置を確認して、ブロック注射しております。ブロックの成功率は90%を超えます。細い針を使用しているため神経損傷など合併症の確率は非常に低いと思われます。また、局所麻酔薬のアレルギーの有無を手術前に外来でテストします。ブロック効果の持続時間は平均すると5時間程度ですが、個人差がありますので、他に点滴などから鎮痛薬を追加する場合もあります。
肩関節脱臼の手術について
Q.
手術の直前まで動かしていてもいいですか。
A.
脱臼直後であれば1週間程度は三角巾で安静を保っていて下さい。
また、手術直前は脱臼しないように極力注意して、脱臼しやすい方向に腕を持っていかないようにしてください。
脱臼をした直後は関節の内部に出血が多くなるため、少々手術の妨げとなるからです。
しかし、上記の場合を除いては、当院のリハビリなどで関節が固くなり過ぎないようにある程度関節を動かしておいてください。
Q.
手術のあとすぐに肩(腕)は使うことができるのですか。
A.
修復部位にもよりますが、原則3週間は三角布とバストバンドで肩を胸に付けた姿勢(内旋位;写真)で安静にしていただきます。この間は肩を開かずに指先でデスクワークする程度にとどめていただきます。車の運転は術後1ヵ月間、自転車の運転は1.5ヵ月間お控ください。
Q.
スポーツ復帰までの期間は?
A.
利き腕か非利き腕の手術であるかということと、スポーツの種類によって変わります。
接触の少ないスポーツ(野球、テニス、水泳)で術後4-5ヵ月、強い接触のあるスポーツ(ラグビー、柔道、スノーボード)で術後6ヵ月が完全復帰のめどとなります。
肘関節鏡(滑膜切除、遊離体切除、骨棘切除、テニス肘腱部分切除)について
Q.
手術のあとすぐに肘(腕)は使うことができるのですか。
A.
手術の程度・範囲にもよりますが、三角巾で1週程度安静にします。
術後2-3週は、軽い作業に留めて、重いものを持ったり、術前の痛みの出やすいところに力を入れないようにしてください。
その間のリハビリも重要です。
手術全般について
Q.
術前の常用薬はどうしたらよいでしょうか?また術後に内服などはありますか?
A.
手術日の決定時、またはその後にお薬手帳か実際の内服薬をお持ち下さい。
降圧剤(高血圧の薬)は原則として手術当日も少量のお水で内服していただきます。
抗凝固剤(血液を固まりにくくする薬)は手術の1週間前に中止していただきます。
術後は、アレルギーの方を除いては、鎮痛薬・抗生物質を数日内服していただきます。
Q.
術後はいつから入浴できますか?
A.
通常、手術翌日に傷の上のガーゼを透明なフィルム素材のもので覆いますので、手術翌日からシャワー浴は可能です。(ただし手術創より出血のある場合は、数日遅れる場合があります。)
フィルムを取り除く術後10日目前後から、湯船での入浴が可能となります。
Q.
手術の後すぐに患部以外のトレーニングは可能ですか?
A.
術後1週は手術創(傷)がまだふさがっておらず、汗をかくと患部が感染する恐れがありますので、当院のリハビリのみにとどめてください。
肩肘手術の場合、ランニングなども患部が安静を保てなくなるので、原則として固定が外れてからにしてください。
早めに患部以外のトレーニングを希望される場合は、当院の理学療法士およびアスレティックトレーナーと術前からプランを立てると良いでしょう。
Q.
手術後他院でのリハビリは可能ですか?
A.
手術後のリハビリは原則として、当院で受けていただきたく存じます。
術式・考え方を十分理解した理学療法士のリハビリを受けていただくことが、治療上非常に重要であるからです。
一般に「手術が半分、術後リハビリが半分」とも言われるほど術後のリハビリは重要です。
術前の悪い関節の使い方や癖を直すことも重要です。