前十字靭帯(以下ACL)再建術は関節鏡視下に行われるようになってから飛躍的に進歩しました。年々改良が重ねられ、世界的には日本がそのリーダー的役割を果たしていると言っても過言ではありません。
現在は解剖学的再建(靭帯の本来の解剖学的付着部に新しい靭帯を再建する手術)が最先端の手術とされています。以前はIsometricity(等尺性)を重視した再建(膝の曲げ伸ばしで靭帯の長さ変化が少ない位置に新しい靭帯を再建する手術)が行われており、現在でもそのまま以前の方法で手術を行っている施設も多く存在します。
Isometricな再建は非解剖学的な再建であるため、再建した靱帯が骨と擦れたり、次第に緩くなってくることが問題となります。このようにして出来た不安定膝は経年的に半月板損傷や関節軟骨損傷を引き起こし、変形性膝関節症の原因となります。
当院ではこのような不安定膝に対する再ACL再建術(ACL revision)も積極的に行っており、良好な成績を収めております。
再ACL再建術
ACL Revision
症例1
【鏡視所見】
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前回手術された再建ACLは、表面は連続性がありそうだが、プロービングで実質部(人工靭帯)は完全に断裂していた。
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IsometricACL再建では、大腿骨側の骨孔が本来の解剖学的付着部の前方に作成されているため、手術すべき領域がそのまま手つかずで残されていることが多く、Revision手術は比較的やりやすい。
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大腿骨側のACL解剖学的付着部位は、Resident s ridge(黒線)の後方であり、前回の手術で作成された骨孔(緑丸)が非解剖学的位置であったことが分かる。
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脛骨側の骨孔は、アプローチ方向を変えて対応し、通常の解剖学的ACL再建と同様の手順で行う事が出来る。
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初回手術 (人工靭帯による非解剖学的1重束ACL再建)
再再建手術 (半腱様筋腱による解剖学的2重束ACL再建)
ACL再建術後のスポーツ復帰には、メディカルリハビリテーション(日常生活復帰までのリハビリ)だけでは不充分であり、アスレティックリハビリテーション(スポーツ競技復帰に向けたリハビリ)が不可欠です。また、再受傷防止の動作を再教育する必要があります。
このような準備がしっかり行われないままスポーツ復帰をしてしまったり、不可抗力による受傷(スキーでの転倒、ラグビーやアメフトのタックルによる受傷など)では、初回のACL再建手術が成功していても、再断裂を起こす場合があります。
症例2
【鏡視所見】



IsometricACL再建後のACL不全膝では、再建靭帯が切れずに緩んだ状態のことが多いが、解剖学的再建後の再受傷の場合は、初回受傷と同様に、線維が断裂することが多い。



前回の骨孔が至適位置であるため、再再建手術の場合は同じ骨孔内での生物学的固着に有利な膝蓋腱の使用が望ましい。さらに可能であれば骨孔壁と骨片の無駄な間隙を極小にできる「解剖学的長方形骨孔ACL再建」の術式がベストである。

初回手術 (半腱様筋腱による解剖学的3重束ACL再建)
再再建手術 (膝蓋腱による解剖学的長方形骨孔ACL再建)