A. 怪我した後は、膝の腫れや痛みのため、膝の動きが制限され、徐々に関節が硬くなってきます(急性期)。その時期に手術を行うと術後のリハビリにかえって時間を要することが分かっています。手術前のリハビリをしっかり行い、腫れや痛みが治まり、膝の動きが健側と同じくらいに戻ってから手術を行うことが推奨されます。(最近では特殊な例として、受傷直後に、組織が腫脹する前に手術を緊急で行うこともあります。)
Q. 麻酔が怖いのですが、、、
A. 当院では、もっとも身体に優しく負担のかからない神経ブロックによる麻酔で手術を行っております。近年超音波検査器械の精度が向上し、神経を直接描出することが可能なため、神経を傷つける事もなく、痛みもほとんど無い、非常に安全な麻酔です。
Q. 手術時間はどのくらいですか?
A. 約1時間です。半月板や軟骨の手術を同時に行う場合は、さらに30分ほどかかることがあります。
Q. 解剖学的再建と言うのはどういう手術ですか
A. 切れる前の本来の靭帯と同じ位置に正確に再現して腱を移植し、機能的にも正常に戻すことを目指した手術で、現在世界的にもっとも優れた手術と言われています。
Q. 2重束再建と1重束再建ではどちらが良いのでしょうか?
A. 本来のACLは2本の束から出来ており、3次元の立体構造になっています。それを完全に模倣するには、1本の束では不可能です。われわれは、2重束再建は手技的に少し手間がかかりますが、本来の靭帯機能を再現できる優れた手術であると考えており、開院当初より施行しております。
Q. 膝蓋腱と半腱様筋腱どちらを使用した手術が良いのですか?
A. どちらの腱を使用しても優れた手術成績が得られます。 採取する腱によって、若干の特徴がありますので、当院では選手の性別、競技種目、競技レベル、得意技、プレースタイル等を考慮して使用する腱を決めております。当院では、女性で非接触型の断裂の場合は半腱様筋腱を使用することが多く、再断裂症例の再再建手術の場合は第一選択として膝蓋腱を使用しています。
Q. オシッコの管を入れたくないのですが(男性)
A. 以前何らかの手術を受けたことのある男性が、最も嫌がる処置の1つにオシッコの管があります。当院の麻酔は、患肢のみに効かせる麻酔のため、オシッコの管は入れません。
Q. 手術による合併症にはどのようなものがありますか?
A. 通常の手術同様、出血・感染・神経損傷その他があります。しかし、関節鏡下に手術を行うためそれらのリスクはほとんどありません。
Q. 手術の傷はどのくらいの大きさですか?
A. 膝の前面に約3cm前後の移植腱を採取する創と関節鏡を挿入する約5mm程度の創が数カ所になります。(症例によっては半月板を縫合する際の創や靭帯固定を補強する際の創が追加で必要になる場合があります)
Q. 手術の金具は後で抜いた方が良いのですか?
A. どちらでも良いです。金具の部分が気になる方は抜いた方が良いでしょう。日帰りで可能です。
Q. 他院でACLの手術をしたのですが再断裂してしまいました。 こちらで再手術をお願いできますか?
A. 問題ありません。近年このような症例が増えてきております。
リハビリ
Q. 術後リハビリは毎日通うのですか?
A. 毎日通う必要はありません。リハビリには術後3か月までは週2〜3回、術後3か月〜6か月は週1回、術後6か月以降は2週間に1回の頻度を目安にお越しいただいています。理学療法士より教わったメニューをご自宅でセルフケアすることも重要になります。早期の競技復帰を目標とされる方は、隣接のメディカルフィットネスセンターでプロのトレーナーによるアスレティックリハビリテーションの併用をお勧めします。
Q. 術後いつ頃まで診察を受けるのでしょうか?
A. Goalをどこに設定するかということになります。日常生活は術後1~2ヶ月で支障なくなりますが、スポーツ復帰には術後6~9ヶ月、競技種目やリハビリの進行具合によっては術後1年近くかかることもあります。通常、手術で移植した靭帯が成熟するには術後半年~1年以上かかりますので、スポーツ復帰した後もフォローアップすることが推奨されています。(当院では術後1年半で卒業になります)
Q. 松葉杖は術後どのくらい使用しますか?
A. 通常術後3〜5週使用します。(より早期に松葉杖を外したい場合はハードブレースを併用する場合もあります。)また、ACL再建手術と同時に半月板や軟骨の処置を行っていることが多いため、その場合はそちらの安静度に依存することになります。昔、Accelerated Rehabilitationといっていたずらに術後の安静度を早めた時期がありますが(術直後より制限なく動かして歩行許可など)、その後再建靭帯に負担がかかることがわかり現在では見直されております。
Q. ジョギングはいつぐらいから可能ですか?
A. 術後3ヶ月の膝の状態で良ければ開始になります。 具体的には、手術した方の足でしっかり安定して身体を支えられること、MRIチェックで再建した靭帯がしっかりしていることなどを評価して決めます。(当院では術後どのくらい経ったからといって、単純にメニューを決めていません。ひとつずつチェック項目をクリアできて初めて次のステップに進みます。急いで中途半端にジョギングを開始しても、フォームが乱れたり他の部位に負担がかかったりして、修正により時間がかかってしまいます。)
Q. スポーツはいつ頃からできますか?
A. あくまでも目安ですが、一般的に術後6ヶ月以降、ACLに負担のかかる競技では8〜9ヶ月以降になります。スポーツ復帰には個人差があり、しっかりとしたリハビリにより早期に筋力回復が得られ適正な動作獲得ができているケースや、ハードプレースの使用が許されている競技では早めに復帰できる場合もあります。逆にスポーツに向けたアスレティックリハビリテーションがおろそかである場合には復帰に時間を要します。
Q. 学校の体育はすぐにできますか?
A. 学校の体育は早く出来ると思われる方が多いのですが、学校の体育だからといってすぐに参加できるわけではありません。むしろ授業内容によっては学校の体育の方が試合形式のゲームや体力測定といった思い切り身体を動かすことも多いため、注意する必要があります。
Q. 手術を受けた人に再受傷する人が多いと聞きましたが…
A. 手術では断裂した靭帯を治すだけです。つまり断裂したという「結果」を治しているにすぎず、ACLが断裂した「原因」を治している訳ではありません。手術により二度と切れない靭帯になる訳ではありません。「原因」を治さずに復帰しても、スポーツで前回の受傷時と同じ状況になれば再受傷してしまいます。 タックルや不意の転倒で受傷した場合はともかく、多くの症例では急な方向転換やストップ、ジャンプ着地で膝を捻って受傷しています。その原因として、膝を内側に入れるような動作が癖になっていたり、股関節や足関節が硬かったり、筋力バランスが崩れていたり、後方重心のプレーが多かったり、体幹の筋力が弱かったり、、、膝以外のところに原因があることも多いです。リハビリでそのような大元の原因を見つけ出し修正して、各自の弱い箇所を強化することにより、受傷以前よりもパフォーマンスを向上させてスポーツ復帰することが可能になります。「リハビリが重要」というのはそういうことなのです。ACLの治療は、手術で終わりではなくむしろ手術がスタートで、リハビリ、その後のスポーツ復帰までのトレーニングが、再受傷予防にはとても重要になってきます。
Q. 術後とても調子が良いので予定よりもリハビリを早めて行って良いでしょうか?
A. ダメです。 早くスポーツ復帰したいからといって、勝手にリハビリを早めることは厳に慎まなければいけません。リハビリの先生と相談した上で行ってください。
Q. 手術だけ受けてすぐ家の近くの病院にリハビリで移る事はできますか?
A. 手術は、施行した施設の責任があります。当院では手術だけを行うことはしていません。遠方からの患者様も多いのですが、必ず術後少なくとも膝が落ち着く1ヶ月程はクリニック近辺で経過を診させてもらっています。
A. ACLの手術は緊急の手術ではありません。前述のようにリハビリがとても大切になります。術後のリハビリの時間がゆっくりとれる時の手術をお願いしています。その場合、もちろん手術で治療するまでスポーツ活動は禁止です。(手術だけ受けてリハビリが出来ないのは一番問題です。リハビリができない場合は手術を受けないほうが良いです。)
その他
Q. 入院期間はどのくらいですか?
A. 当院ではACLの手術は月曜日と火曜日に行っております。ベッドの関係で、週末には退院になります。
Q. 退院後すぐ仕事に行けますか?
A. 退院後すぐに仕事に行けるわけではありません。 従来ACLの手術は1か月以上の入院を必要としていました。現在でもベッドに余裕のある病院では長く入院可能なところもあり、膝にとってはその方が良いのかもしれません。 しかし手術も進歩し、当院の統計では術後3日以内にほとんどの患者が痛みが軽減し、1週間以内に退院可能となることがわかりました。しかしあくまでも、膝を中心に考えなくてはいけませんので、退院後自宅では入院と同等の安静度を保ってもらう必要があります。自宅が遠方の方は、クリニックの近くの提携ホテルへの宿泊をお勧めしています。 当院は開院当初はベッドが2床しかなく、手術後超短期入院で近隣のホテルよりリハビリ通院するという欧米スタイルのシステムをいち早く取り入れました。(近年の医療改革に伴い、大病院が競って入院期間を短くする傾向になって参りました。)
Q. 手術後いつから飲食可能ですか?
A. 当院は患肢のみの麻酔のため、術直後より飲食可能です。ただし、痛み止めの併用なのでウトウト寝ている場合は、しばらく経ってからの食事開始となります。
Q. シャワーはいつ頃から浴びれますか?
A. 術翌日は清拭になります。術後2〜3日したら手術創部は防水シートで覆いますので、創部を保護してシャワーは可能になります。
Q. 手術後いつからお風呂に入れますか?
A. 術後10日から2週で抜糸になりますが、抜糸の翌日より湯船への入浴可能となります。
Q. 車の運転はいつ頃からできますか?
A. 抜糸の後、膝固定具がサポーターに変更となりますので、左膝の手術でオートマの自家用車であれば、その頃より運転は可能です。右膝の手術の場合は、運転自体は可能であっても、膝をかばって咄嗟の動作が鈍くなりますので、術後1ヵ月は運転を控えるようにお願いしております。(運転する場合は自己責任でお願いします。)
Q. 試合が近いので、手術をしないで試合に出たいのですが…
A. 100%のパフォーマンスを発揮する事はできないでしょう。特にバスケットやサッカーなど急な方向転換を必要とする競技は、ほとんど不可能です。無理して試合に出て、さらに悪化させてしまうケースをたくさん診てきました。特に関節軟骨の重度の損傷を合併すると治療成績にも限界がでてきます。
Q. このまま手術をしないとどのようになりますか?
A. 手術を受けずに膝が不安定のままにしておくと、スポーツや日常生活での急な動作の際に関節がずれ、次第に関節の中が痛んできます。半月板に負担がかかるため、半月板が傷ついてきたり、関節軟骨が少しずつすり減ってきて、最終的には変形性関節症になります。 (ただし、おとなしい動作ではACLに負担がかからないので、今後スポーツをしない高齢者ではACL再建手術の適応が少なくなってきます。) 若い人や年齢にかかわらず今後もスポーツを行っていきたい人は、靭帯以外の関節内組織が損傷する前に、関節を安定させるACL再建手術を受けることがベストの治療になります。
Q. 遠方から手術を受けに来るのですが、大丈夫でしょうか?
A. 当院は遠方からも沢山の患者様にお越しいただいておりますが、患者様のご負担を極力軽減するため、事前にお電話にてご相談させていただき、術前の来院回数を1回(術前検査、手術説明)、あとは手術当日にお越しいただけるようにしております。 (遠方患者様優先手術相談電話 月〜金 19:00〜20:00 TEL042-686-0580)