(しつがいこつだっきゅう)
比較的軽い衝撃にも関わらず、膝蓋骨(お皿の骨)がはずれてしまうという怪我です。 通常、女性に多く、膝蓋骨が外側にはずれます。 体育の授業やスポーツ活動中に、「膝を捻って、お皿が外れた」とクリニックを受診される方をよくみます。 「外れた」までいかなくても、不安定なために違和感を感じる状態を膝蓋骨不安定症とよびます。
多くの脱臼は自然に整復され、救急で整復を受けることはまれです。 ただし、整復されても、腫れがのこり、強い痛みがあります。 初期の炎症が収まったあとも、歩行時の不安感や痛みが継続することがあり、転びやすいという訴えも聞きます。 膝専門医の受診は必要と思われます。
交通事故などでもみられますが、比較的軽い衝撃でも外れてしまうケースをよくみます。 これは、もともと外れやすい方がいるからと考えられます。
レントゲン、MRI検査、CT検査をおこないます。 膝蓋骨の現在の位置、細かな骨折の有無、軟骨損傷の有無、周囲の靭帯損傷について評価します。
慢性的な膝前方痛、不安定感があり、スポーツ活動に支障がでます。 膝蓋骨が不安定なまま経過すると、膝蓋骨と大腿骨の軟骨がすりへり、膝蓋大腿関節症に至ることもあります。
「外れたかどうか、自分でもわからない」というような軽症の場合、または初回脱臼の場合、リハビリテーションを中心とした保存治療をおこないます。先に述べたリスクファクターのうち、骨の形態は自分では変えられません。筋力や下肢の使い方が治療のターゲットになります。リハビリテーションでは、大腿四頭筋(内側広筋)トレーニングや、下腿外旋の改善をめざします。
十分なリハビリテーションを行っても、複数回の脱臼に至る場合、手術をおすすめします。 手術には、幾つか種類があります。
我々も第一選択として、MPFL再建を行っています。 下腿外旋や膝外板が強い場合、遠位アライメント矯正(Elmslie-Trillat法)を追加することもあります。
膝蓋骨に新しいシートベルトをつくる手術になります。内側ハムストリング腱を用いる場合と、テープ状の人工靭帯を用いる場合があります。膝に3−4箇所の小さなキズをつけ、膝蓋骨と大腿骨に移植腱を固定します。 術後3−4週で松葉杖がとれ、術後2−3ヶ月でジョギングできるようになります。6ヶ月以降に、スポーツ復帰をめざします。
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